公開日 2016年6月6日
玉手山9号墳
それでは、玉手山古墳群の首長墳と考えた玉手山9号墳、3号墳、1号墳、7号墳の順に、各古墳を少し詳しく紹介していきたいと思います。
9号墳は古墳群の南寄り、現在の西名阪自動車道の北側にあります。墳丘の東側半分は過去に削られ、西側半分が残っています。1982・83年度に発掘調査を実施し、その際の出土埴輪から玉手山古墳群最古の古墳と考えてまちがいないと思います。
墳丘は全長64.6m、後円部直径33.2m、後円部高さ5.7m、前方部幅17.7m、前方部高さ2.6mで、細長い前方部が広がらずにのびるいわゆる柄鏡形の前方後円墳です。奈良県桜井市の茶臼山古墳の墳丘とよく似た形となります。墳丘は後円部3段、前方部2段に築かれています。もとの地形に手を加えたあと、若干の盛土によって築かれています。墳丘には全体に葺石が葺かれていたようです。一番下にはやや大きめの石が置かれ、そこから上に石を積み上げています。石材は石川で採取されたと考えられています。とりわけ、後円部から前方部へと変化するくびれ部で良好に残っていました。
くびれ部のテラス面には円筒埴輪が立ち並び、埴輪の間には木の柱を立てていたあとが確認されています。何かの木製品、たとえば木製の蓋(きぬがさ)や盾などを立てていたと考えられます。円筒埴輪とともに、壺形か朝顔形と考えられる埴輪も出土しています。どちらも埴輪の起源となった弥生時代の特殊器台、特殊壺と呼ばれる特徴を残しており、埴輪としては初期のものであることがわかっています。
埋葬施設は竪穴式石室で、亀の瀬で産出した安山岩の板石で築かれています。石室の底には礫が敷かれ、石室の下部を築いてから割竹形木棺を安置したのちに石室を完成させています。
副葬品は、発掘調査で出土したのは鉄剣の先だけでしたが、1952年に一部で調査が行われており、その際に琴柱形石製品、勾玉、ガラス玉、鉄剣、鉄斧、土師器などが出土したということです。これらの出土品の一部は関西大学に保管されています。
(文責:安村俊史)
玉手山9号墳くびれ部葺石